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労災と企業責任

労災が発生すると企業責任を問われる

企業の従業員(以下「被用者」といいます。)が仕事中に
ケガをしたり死亡した場合、企業は使用者としての責任を
負わなければなりません。
この責任は、大きく刑事責任、民事責任、社会的責 任に
分類されます。
刑事責任の法的根拠は一般法である刑法と特別法である
労働安全衛生法等に、また民事責任の法的根拠は一般法
である民法と特別法である労働基準法等に、それぞれ求め
られます。

  労働災害における企業責任
 
刑事責任
●刑法
●労働安全衛生法等

民事責任

●民法(損害賠償責任)
●労働基準法等(災害補償責任)

社会的責任

 

労働災害防止の責任者は誰か

労働災害の防止対策を推進することにより、職場における
労働者の安全と 健康を確保し、快適な職場環境の形成を
促進するために定められた労働 安全衛生法は、危険防止
基準や安全衛生体制 の確立など労働災害防止 のために
種々のことを定めています。
その条文の大部分が、「事業者は、 .........しなければならない。」
と事業者責任(企業責任を明記してあり、違反した場合
は罰則が 適用されます。
 この事業者とは、「法人企業であれば当該法人、個人 企業
であれば事業経営主を指している。
これは、従来の労働基準法上の義務主体であった使用者と
異なり、 事業経営の利益の帰属主体そのも のを義務主体と
してとらえ、その安全 衛生上の責任を明確にしたものである。」
と厚生労働省労働 基準局長 通達で示しています。

1.刑事責任

労働災害を発生させると、労働安全衛生法の違反がなかった
か労働基準 監督署の調査が行われ、 違反があれば刑事責任
が追及されます。
刑事責任では、労働安全衛生法違反のほか、刑法の業務上
 過失致死傷 に問われることもあります。

(1)労働安全衛生法違反
労働安全衛生法および関連諸規則には、事業者が労働災害を
防止するた めに守らなければなら ない多くのことが規定されています。
労働災害が発生するとこれらの規定に違反していないか追 及
されることに なります。

(2)業務上過失致死傷
業務上過失致死傷とは、業務上必要な注意を怠って人を傷つけ、
または 死亡させることをいいます。
 労働災害の場合、工場で作業をしていたり、 建設現場でクレーン
を操作している際、被用者が 機械に巻き込まれたり、 吊り荷の
下敷きになるといった事例があります。
 その場合、警察署は、 誰が必要な注意を怠ったかを調べ、
業務上過失致死傷として問題にします。
 労働安全衛生法違反の行為に伴い、死亡または傷害事故が
生じると、 大抵の場合は事業者は業務上過失致死傷に問われ、
前記(1)労働安全 衛生法違反と両方の処罰を受けることになります。

[罰則]
労働安全衛生法が、労働災害防止のため事業者(企業)が
行うべきこと を規定していることは 上述したとおりですが、労働
安全衛生法の規定に 違反して労働災害を発生させると、違反した
行為者には刑事罰が課せ られます。
またこの行為に伴って、傷害致死の結果が生じたときには、
同時に業務上 過失致死傷により5 年以下の懲役もしくは禁錮
または100万円以下の罰金 の刑が課せられることがあります。

2.民事責任

(1)災害補償責任
被用者が業務上の災害によって負傷し、または疾病にかかりもしくは
死亡した場合、使用者 (企業)に災害補償の責任が生じます
(労働基準法)。
 補償には、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、
葬祭料等があり、 この補償責任を履行 するための制度として
政府労災保険があります。
政府労災保険では業務上の災害のほか、通勤災 害について
も保険給付が 定められており、公務員を除く民間事業のすべて
に強制適用されています (ただし、一部暫定任意適用事業があります。)。
 政府労災保険が適用される条件は、事故が「業務に関し」生じ
たことであり、 その事故の発生 について使用者側(企業側)にお
いて労働災害防止上の対応が十分であったか、なかったかは問
いません。
いわゆる「無過失責任主義」をとっています。

(2)損害賠償責任
政府労災保険の保険給付は、前述のように療養(補償)給付、
休業(補償) 給付、障害(補償) 給付、遺族(補償)給付、
葬祭料、傷病(補償)年金、 介護(補償)給付に限られますので、
被 災者の被った損害をすべて補償してい るという訳ではありません。
たとえば政府労災保険は事故 後の休業3 日間については、保険金
を支給して いません。
また休業補償も平均賃金の8 割(休業補償給付6 割+特別支給金
2 割)という形で支給され、全額補償ではありません。
また、事故に伴う精神的苦痛に対する慰謝料(入通院慰謝料、
後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)についても、政府労災保険では
保険金を支給していませんので、 その補償を求めて損害賠償請求請求
訴訟がなされることもあります。
この場合には、労働災害が事業者(企業)の故意・過失があって
発生したこと (不法行為責任、 労働安全衛生法違反等の事故で
あれば、この責任があり ます。)
または、安全配慮義務違反があって発生したことであれば、
損害賠償 責任が生じ、民事裁判によって支払いを命じられることこと
になります。

1.不法行為責任
事業者の法律上の損害賠償責任のうち不法行為責任は、民法
において、故意または過失によって 他人の権利を侵害した者は
それによって生じた損害を賠償しなければならないと定められて
います。
また、使用者としての責任や土地工作物の所有者および占有者
の責任などは、特別規定として 加害者の責任の厳格化が図られ
ています。

a. 使用者責任
ある事業のため他人を使用する者は、被用者がその事業の執行
について第三者に加えた損害を 賠償する必要があります。
作業責任者の過失が認められたり、安全配慮義務違反があって
発生した事故の場合、その使用者である企業が使用者責任を
問われることになります。

b. 土地工作物責任
土地の工作物の設置または保存に欠陥(瑕疵)があったことで、
他人に損害を生じさせた場合 は、その工作物の占有者は、被害者
に対して損害を賠償する責任があります。
ただしその工作物 の占有者が損害の発生防止に必要な注意をした
ときは、その工作物の所有者が、被害者に対して 損害を賠償する
義務があります。
土地の工作物には、建築物だけでなく、機械・設備・器具等も含ま
れます。
これらの欠陥によっ て生じた労災事故については、企業の損害賠
償責任を認めた判例も多く出ています。

2.債務不履行責任
事業者の法律上の損害賠償責任は、不法行為のほか、民法にて
債務不履行責任が規定されています。
これは、債務者の債務不履行責任、つまり契約違反があった場合に
発生する損害賠償責任を指します。
 企業は被用者を雇うときに、安全に就業させる安全配慮義務が生じ、
この義務に違反して事故が 発生すれば契約違反すなわち債務不履行
となり、このために生じた損害を賠償しなければなりません。

3.社会的責任

重大な労働災害が発生した場合や、度々労働災害が発生した場合
には、建設業で見られるよう に指名停止・取引停止等の社会的責任を
追及されることが多くなっており、業務停止などの行政処分を受ける
こともあります。

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任意労災請負人 大室順一郎
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参考資料1:法定外補償規定(雛形)